月刊OPTRONICS
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2008.3 vol.27 No.315 |
総論
大阪大学 大森 裕
フレキシブル電子・光集積デバイスと題した本特集ではポリマー導波路と有機発光素子,有機受光素子をポリマー導波路上に作製することにより,やわらかく成型が可能な光集積デバイスを実現することを目指している。有機発光素子は可視光領域に発光効率が高く,また高速の応答性を持つ発光材料が開発されており,可視光領域に比較的低損失なポリマー光導波路やポリマー光ファイバーと組み合わせることにより,簡便で印刷プロセスで安価に大量に作製できる光集積デバイスを目指す。・・・(続きは本誌で)
ポリマー光集積回路
東北大学 戒能 俊邦
ポリマー光導波路
NTTアドバンステクノロジ(株) 疋田 真
光導波路は,透明性に優れた石英系材料を,シリコン基板上に堆積することにより作製が開始された。その後大きな非線形効果を持つポリマーを導波路構造にし,アクティブ素子として,応用することが試みられた。光ファイバ通信が発展してくると,ポリマー導波路は,従来の石英系より,安価な部品候補として,方向性結合器,AWG,TOスイッチ等が作製された。その後,光インタコネクションの必要性が話題となり,特に,光源としてVCSEL(面発光レーザ)が話題となり,その導波路として,マルチモード系ポリマー導波路を使用することが検討されるようになって来た。・・・(続きは本誌で)
動画信号を光伝送可能な有機受発光素子
大阪大学 大森 裕,梶井 博武
導電性の有機材料が数多く開発され,液晶や有機EL(electroluminescence)によるディスプレイなど,電子・光デバイスへ応用されている。有機EL は発光材料を選択することにより容易に発光波長は可視域をすべてカバーすることができ,フルカラーディスプレイに応用されているが,その高速応答性と成膜プロセスが低温であることの特徴を生かして,有機発光素子,有機受光素子とポリマー導波路を集積化した光集積デバイスを形成し,光インターコネクションへの応用が可能となる。・・・(続きは本誌で)
光デバイス展開へ向けた高発光性有機結晶
信州大学 金澤 周介,市川 結,谷口 彬雄
自己整合技術を用いたフレキシブル有機EL素子と非接触電磁給電発光
富山大学 岡田 裕之,中 茂樹
大面積化可能,超軽量,超薄型,フレキシブルの特徴を有する有機エレクトロニクスデバイスの研究開発に注目が集まっている。そのなかでも有機EL 素子では,民生品の量産・商品化と市場規模拡大へ向けた検討が始まっており,小型モニターではSamsung SDI 試作の2.2 インチMP3 プレイヤーや携帯電話が,モニター用ディスプレイでは11 インチの液晶テレビがSONY から販売されるに至っている。ここで,将来の有機EL 素子を始めとするデバイスによる新市場展開を考えると,フォトリソグラフィ,エッチングや高価な蒸着装置と言う従来技術から脱却し,大面積化が容易,スループットが大で低コストの特徴を持つ新たなデバイスプロセスの開発に期待が掛かる。・・・(続きは本誌で)
いよいよ立ち上がる40Gb/s市場―関連デバイスの動向-
インターネット回線のFTTH 化が進む中,今年はNTTによるNGNの運用開始が予定されるなど,光通信市場はさらなる躍進が期待されている。特にここ1,2 年,従来の10Gb/s に代わる次世代通信として,40Gb/s 関連製品の研究発表・リリースが相次いでおり,今年はいよいよその市場が本格的に立ち上がると見られている。米国Communications Industry Researchers の調査によれば,2006 年に3,170 万ドル程度だった40Gb/s モジュール・コンポーネントの世界市場は,2008 年には9,970 万ドル,2012 年には5 億2,980 万ドルにまで伸長すると予想されておりその期待は高い。・・・(続きは本誌で)
プロジェクタ市場で対峙!? 二方式の緑色レーザ
530nm 近傍の緑色光源は現在,半導体レーザ(LD)による直接発光と,固体結晶や非線形光学デバイスを用いた波長変換による発光といった二方式での研究・開発が進められている。このうち,緑色LD は現時点では実用化に至っていない。緑色を光源として用いる主なアプリケーションには,レーザ・プロジェクタなどディスプレイ分野や,バイオ・医療分野,レーザポインタ,加工分野などがあるが,これらの多くで適用されているのが,波長変換方式による緑色レーザだ。今回は,緑色レーザにスポットライトを当て,LD による直接発光と,波長変換による発光の両方式における開発課題,加えて主要参入メーカにおける研究・開発の動向を探ってみた。・・・(続きは本誌で)
レーザかLEDか,プリントヘッド用光源の最新事情
複合機メーカ大手の富士ゼロックスは,オフィス用複合機や業務用プリンタの心臓部であるプリントヘッドの光源に,これまでのレーザに代わって今後LED を採用していくと発表した。プリントヘッドにLED を使用するプリンタは1980 年代に登場,決して新しい技術ではないが,これまで一部のメーカが採用してきたほかは,大判印刷が求められる図面用プロッタの光源等,限られた用途において使われるにすぎなかった。現在,トナーを用いて印刷する電子写真方式のプリンタ/複合機市場の光源は9 割以上をレーザが占めるとも言われているが,なぜ再びLED に注目したのか。レーザとLED,両者の長所・短所について見ていくことにするとともに,LEDプリンタに対する各社の動きを探ってみた。・・・(続きは本誌で)
IT市場ウォッチング 第84回 SaaSのインパクト
(株)野村総合研究所 藤浪 啓
光通信ネットワークのユーザである情報サービス産業では,一貫してネットワーク化が進展してきた。そのなかでシンクライアントとファットクライアントの循環的なブームが起こった。メインフレームの時代には希少なコンピューティングリソースを多数のユーザで共有するTSS(Time Sharing System)が主流であったが,IBM360 の登場などコンピュータの汎用化と低価格化が進んだ。その後も,オフコンの登場,サーバやPC などへのダウンサイジングが続き,コンピュータは普及を続けていった。コンピュータの普及に伴いコンピュータを相互に接続することに対するニーズも高まっていった。・・・(続きは本誌で)
ワン・ポイント結像光学 最終回 線形結像
朝枝 剛
今回でこの連載を終了することになりました。この連載でお話ししたことを整理してみたいと思います。画像を記録するカメラやコピー機においてもまた表示する映写機や投影機(プロジェクター)においても,像を転写するために光学系(レンズ系)を使います。図1のようにレンズで像を転写する作業を結像と呼びます。結像を理解する基本的な考え方は転写される対象(被写体)は無数の点光源からできていると考えることです。3 次元の物体であるリンゴは明るさと波長成分が異なる無数のたくさんの点光源の集まりであると考えます。・・・(続きは本誌で)
事例に学ぶ光・電子分野の知的財産 第3回 ビジネス指向を強める著作権
職業能力開発総合大学校 西澤 紘一,(独)雇用・能力開発機構 埼玉センター 櫻井 博行
15 世紀グーテンベルクが印刷機を発明した時,著作者や出版社の権利を保護する考え方が生まれたと言われている。従来複製を作るためには,原本から写本する以外に方法が無かった。しかし印刷技術の出現とともに書籍(当時は,聖書が主流)が一部の聖職者から一般の人々に普及するようになり,その経済的市場価値が確立していった。と同時に著作権と言う概念が発生したと考えられる。16 世紀になるとベニスで出版業が興り,出版権が確立してくる。1662 年,イギリスでは,出版権を定めた法律が出来た。・・・(続きは本誌で)
光の研究コミュニティ-技術進展を支える光関連研究会/グループ- 第55回
(社)日本分光学会 顕微分光部会
東京農工大学 太田 善浩
顕微分光部会では,微小領域における分光学に関連した科学,装置,及びそれらの応用等について議論する場を提供し,分光学と顕微光学を融合した研究領域の発展に寄与することを目的としています。そのために,顕微分光に関する講習会などを企画し,顕微分光に興味を持つ若手研究者の育成や顕微領域における分光学を広く伝えるための活動を行います。今後,ナノテクノロジー研究の進展とともに,微小領域での計測・制御技術はさらに重要になり,上記の活動は既成の学問領域を超えた学際的な議論に役立つと考えられます。・・・(続きは本誌で)
21世紀を切り開く機能性単結晶の基礎と応用
第11回 希土類添加GaAs結晶の原子レベル制御成長と新規発光デバイスへの応用
大阪大学 藤原 康文
希土類元素。周期表ではLa の位置で天狗の鼻のように突き出しているLa からRu までの15 種の元素群に,YとSc を加えた17 元素の総称である。我々の日常とは一見,無縁に見える元素群であるが,照明やディスプレイ,磁石や化学触媒等,身の周りで広く用いられている。絶縁体に不純物として添加された希土類元素の発光特性はよく調べられており,母体の種類に大きく左右されず,各元素に特有の波長で,鋭くかつ温度依存性が極めて小さい,4f 殻内遷移に起因する発光スペクトルを示す。これは4f 殻電子が5s および5p 殻電子によりスクリーニングされていることに起因する。・・・(続きは本誌で)
発明・特許のこぼれ話 第3回 特許取得ランキング
SMK(株) 鴫原 正義
多国籍企業Wolters Kluwer 社の特許関連情報サービス部門IFI Claims Patent Services が,毎年1月に前年における米国特許取得件数のランキングを公表しています。今年は1月14日に2007年における上位35 社が発表されました。今回の発表内容を加え,過去10年間における上位15社の取得件数の推移を表1に示します。今回の発表によると2007年の取得総件数は157,284件で,過去最高だった昨年の173,773件から9.5%減少していると報じています。しかし,110万件もの大量保留案件を抱えている状況にあり特段にこの時期の出願件数が減少しているのではないようです。なお,ランキングの推移ではIBM が15年連続の堂々たる1位です。・・・(続きは本誌で)
技術士PLAZA 第3回 ゴジラと科学技術者の倫理
宮島技術士事務所 宮島 愼
映画「ゴジラ」第1作が上映されたのは1954年,筆者が小学生低学年の頃であった。それを観た時,何か特別な強い印象を受けた記憶がある。技術者となって後年,技術士を受験するにあたっていろいろ勉強しているうちに,この映画の印象が科学者・技術者の倫理に関することだと認識するようになった。最近DVD※化されたものを観て改めて科学・技術の功罪について感じたことを述べる。この映画は,海中に出現した怪獣ゴジラが首都東京を襲い,大きな被害を与えるという設定であるが,今の怪獣映画のようにエンターテインメント化されたものだけではなく,科学技術が人類に及ぼす影響についてのメッセージが込められている。・・・(続きは本誌で)
基礎からの量子光学 第27回 18桁の精度を目指す次世代時間周波数計測
―光格子時計・光周波数コム・光リンク―
東京大学 香取 秀俊
自然科学の観測量は,時間,長さ,質量などからなる7 つの基本単位系を使って記述されるが,このうちで突出した高精度で数値化できるのが時間・周波数である。このことから,「計測の精度を極めたければ,測定の物理量を時間・周波数の測定に置き換えなさい」という精密計測の鉄則が生まれる。時間と空間の概念がアインシュタインによって相対性理論として統一的に理解されると「光速度不変の原理」により光速度は定義値となり,長さの計測は時間計測に還元された。また,電圧計測もジョセフソン効果を介して,周波数計測に帰着するように,時間・周波数計測はまさに精密計測の要となっている。・・・(続きは本誌で)
USA Today 第3回 Photonics West 2008〜一参加者として
Optomarketing USA 中島 和宏
光技術の研究開発・特許動向II/技術別に見る最新情報
第123回 偏光手段を持つ立体映像装置
嶋本国際特許事務所 嶋本 久寿弥太
立体映像装置は,立体視または他の3次元効果を生ずるもの(G02B27/22)が中心で,そのほか,反射プリズムと反射鏡のみを含むもの(G02B27/24)と,偏光手段を持つもの(G02B27/26)が知られている。立体映像装置を国際特許分類で特許出願公開で見ると, 立体視または他の3 次元効果を生ずるもの(G02B27/22)では,1994年(平成6年)に85件,95年に156件,96年に207件,97年に167件,98年に125件,99年に82件,2000年に125件,01年に143件,02年に132件,03年に133件となっていて,合計1355件となっている。・・・(続きは本誌で)
HEAD LINE NEWS
DATA ROOM
▼ガラス製光ファイバ・ケーブル輸出量,24ヶ月連続のプラス
▼CCDの生産実績,32ヶ月連続のプラス
▼民生用電子機器国内出荷金額,対前年同月比103.2%の3,771億円
PHOTONICS SPECTRA
▼Emcore,Intelのテレコム部門を買収
▼JDSU,Westoverのファイバ部門を買収
CALENDAR
EVENTS
▼NGN時代の光技術・産業懇談会第5回公開討論会
▼レーザー学会第372回研究会「レーザーマイクロ・ナノプロセシング」
▼多元技術融合光プロセス研究会 第5回研究交流会「福祉・健康・医療・安全」
▼X線反射率法による薄膜・多層膜の解析 第2回講習会
▼レーザー技術特別セミナー レンズ技術特別セミナー 光ファイバ技術特別セミナー
▼ILLMC 2008 International Laser, Light-Wave and Microwave Conference
▼第18回量子情報技術研究会
▼Inter-Opto'08
PRODUCTS INFORMATION
東芝がHD DVD撤退を発表しました。これでポストDVDの流れはBlu-ray Disc(BD)の一本化で決着することになりました。きっかけはHD DVD陣営であったはずのワーナー・ブラザースが1月のコンシューマー・エレクトロニクス・ショー開幕の三日前に,BD単独支持を表明した事でした。
これを機に,家電量販店大手のベスト・バイは今後BD規格の商品を中心に販売していくと発表,小売最大手のウォルマートもBD一本化を表明して,レンタルソフト大手のネットフリックスも同じくBDの一本化を発表しました。雪崩を打つように形勢は決まったという感じです。
製品の値下げで米国でのシェアを獲得しようとしてきた東芝は,これ以上 HD DVDに固執するよりは,傷が大きくならないうちに撤退する事を選択したようです。同社は同じ記者会見場で1兆8,000億円を投じてNAND型フラッシュメモリ工場を新設すると発表しました。選択と集中をアピールすることでマイナスのイメージはかなり払拭され,市場もこれを評価しているようです。一方,小売業界ではBD一本化によって,これまで買い控えをしていた消費者の購買意欲が高まると期待を持って受け止めています。
それでも東芝の損失は数百億円にはなると言われています。それに加え既にHD DVDを買っている消費者への今後の対応やHD DVD陣営の他の企業が受ける損失等,これで一件落着という単純なものではないようです。
BDとHD DVDの規格を巡っての一連の動きから何を学ぶべきなのでしょうか? もっと早い時期に規格統一ができなかったのかという点が返す返すも残念ですが,振り返ってみれば歩み寄りの動きは2005年にありました。でも両者の折り合いは付かず,結局は今回の結論となりました。
1980年代の我が国の電気・電子メーカは世界一という地位を謳歌していました。VTRや様々な光ディスクなどの規格を巡り国内で争っていても,その間隙を縫って市場を奪う海外企業を心配する必要は余りなかったと言えます。ところが今はどうでしょう? DRAMやLCDを始め,韓国や台湾がシェアで優位に立つ製品は数多くありますし,中国なども今後は力をつけてくるでしょう。もちろん,復活を果たした米国や欧州の研究開発力やビジネス手法は脅威です。
一方,メモリという点でのライバルに目を移すと,ハードディスクやフラッシュメモリの大容量化は急速に進んでいます。ネットワークからダウンロードする時代に可搬型メディアは必要ないと,アップルの新しいノートパソコンにはハードディスクしか搭載されていません。これらに対抗するには,如何に速く普及させるかが重要な要素となってきます。
世界を相手に競争しているという事を忘れてはならないのでしょう。日本企業同士で争っている間に油揚げをさらわれるというのでは戴けません。確かに企業は自由であり自らの意思で営利活動を行なう権利を持っていますが,単独では簡単に勝てない時代,日本企業が連合を組んでという視点も大切ではないでしょうか。21世紀はグローバリズムの時代と言われますが,世界の根底ではナショナリズムの流れが強くなっている事も無視はできません。
編集長 川尻 多加志
4月号 特集『進化を続ける面発光レーザ(仮題)』
▼総論
▼並列光リンク用GaAs系面発光レーザアレイ
▼長波長帯面発光レーザの開発
▼超高速面発光レーザ
▼フォトニック結晶面発光レーザの高出力化
▼面発光レーザの新機能応用
▼International Symposium on VCSELs and Ingegrated Photonics レポート
(都合により,内容に変更のある場合があります。)