月刊OPTRONICS
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2010.4 vol.29 No.340 |
総論−今後も応用が広がる超精密・マイクロ加工技術と計測技術−
中部大学 鈴木 浩文
超精密加工・計測技術は,20世紀後半にアナログカメラやレーザ機器用の非球面光学部品や,磁気ヘッドの製造技術として発展した。しかし近年は,光学部品の応用分野がアナログデバイス用から,DVD,デジタルカメラ,光通信などのデジタルデバイス用に移行した。その間,超精密機械,超精密な工具技術,単結晶ダイヤモンドバイトを用いる超精密切削技術,ダイヤモンドホイールやcBNホイールを用いる超精密研削技術,超砥粒やメカノケミカル作用を有する遊離砥粒を用いる超精密研磨技術,接触プローブやレーザ干渉原理を用いる超精密計測技術,レーザスケールを用いる超精密加工機械,超精密・微細工具技術,加工プロセス技術が急速に発展し,現在では10nmレベルの形状精度と1nmレベルの表面粗さの機械加工も可能となっている。・・・(続きは本誌で)
最新の超精密・マイクロ機械加工技術およびその応用
大阪大学 竹内 芳美
機械加工として切削加工と研削加工があげられるが,切削加工によるマイクロ加工の特徴は,非常に高い寸法精度・形状精度・表面粗さを容易に得られること,複雑な形状を自在に作り出せること,加工材料をほぼ自由に選べること,にあると言える。精度よく管理された切れ刃形状をもつ工具を正確に運動させることによって,切れ刃の形状を工作物に正しく転写できるからである。超精密加工と呼ばれる切削加工技術は,30年前から旋削加工で実現されている。ナノメートルの位置決め機構を備えた超精密旋盤と,高い形状精度をもつ単結晶ダイヤモンド工具を用いて,被削性の良好なアルミ合金や無酸素銅などを鏡面加工し,レーザプリンタ用のポリゴンミラー,レーザの反射ミラー,磁気ディスク用サブストレートなど平面や球面,軸対称非球面の生産に貢献してきた。・・・(続きは本誌で)
WLC(ウェハレベルカメラ)レンズ概要と計測について
(株)菱光社 松岡 伸夫,片桐 健男
私たちの身近にある携帯電話,デジタルカメラ,デジタル機器が,これからも需要が伸びることは誰もが予想していることである。これらの製品には,レンズが必要不可欠な部品となっている。これまで日本は機械加工に基づくレンズ製造プロセスでリードをしてきた。しかし最近,量産・低コスト化を目的とした新しい製造プロセスが注目をされている。WLC(ウエハレベルカメラ)製造工法といわれているのが,その1つである。従来,カメラ・モジュール製造はCMOS,レンズユニット,アセンブリングなど委託分担によりメーカーが分かれていた。ここにきて半導体メーカーがTSV工法(貫通電極/through silicon via)を取り入れCMOS製造プロセスを確立することにより,カメラ・モジュール製造の役割分担が大きく変わろうとしている。半導体メーカーがウェハ上でレンズ製造プロセスまで手がければ,カメラ・モジュール製造の全てをカバーする構造へとサプライチェーンが大きく変化すると言われている。・・・(続きは本誌で)
最新の超精密加工機と加工事例
東芝機械(株) 福田 将彦
1980年代前半に,米国より市場投入された超精密CNC旋盤を用いた非球面レンズ用金型加工が産業として登場し,現在に至るまで日本の超精密加工産業の代表例として飛躍的な発展を遂げた。超精密加工機はこの要求に応えるため,測定器などの周辺装置と合わせて高精度,高性能化が図られている。例えば,無電解Niめっきが施されたプラスチックレンズ用金型の加工では,形状精度PV100nm以下,面粗さRa5nm以下が標準的に得られるようになっている。今だなお非球面レンズの適用範囲が拡大しており,さまざまな性能を有した光学部品の高精度加工が求められている。そこで本稿では,これまで精度向上が図られてきた超精密加工機の内容と,加工機性能を生かした適用事例として,レンズアレイ用金型加工と硬脆材料の延性モード切削加工について紹介する。・・・(続きは本誌で)
最新のマイクロ加工用切削工具とその加工事例
(株)アライドマテリアル 小畠 一志
近年,マイクロ加工用切削工具の開発は活発であるが,ナノメートルオーダの表面粗さや形状精度を得るため切れ味の良い鋭利な刃に成形でき,かつ,その状態を長く維持できるのは単結晶ダイヤモンドを工具素材とした超精密ダイヤモンド切削工具(図1)である。これらの被削材は主に銅,アルミニウム,無電解ニッケルめっきなどの非鉄金属になる。一方,光学素子は従来の屈折を利用した非球面レンズ,フレネルレンズだけでなく,回折を利用した回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Elements)やそれらのハイブリッド化などが進み,更なる微細化,高機能化,そして低コスト化が求められ,マイクロ加工における要求が高まっている。これらの要求に応えるため,下記の3つの加工に対応した工具の開発を行っている。・・・(続きは本誌で)
超音波振動を援用した超精密加工技術とその事例
多賀電気(株) 浜田 晴司
近年,ピックアップレンズやマイクロ流体デバイス,光通信機器等の金型材料に対する高精度・微細加工の必要性が増加している。また,金型の高精度表面仕上げ,小型化,短納期化,低コスト化などの要求も強い。弊社は超音波装置メーカーとして,各種産業用超音波機器を開発してきたが,これらの高精度・微細加工に対する要求に応えることが可能な技術として,最近超音波を援用した加工技術が,注目を集めているようで,国内はもとより海外からも,問い合わせが相次いでいる。本稿では,弊社が関係した各種超音波援用加工機器の中で,特に超精密加工に関係のある,「超音波楕円振動切削装置」,「非同期型超音波複合振動ポリッシング装置」,「キャビテーション援用微細加工装置」についての,動作原理の概要とその応用事例について述べたい。・・・(続きは本誌で)
結晶系太陽電池ウェハーの切断加工技術
金沢工業大学 諏訪部 仁,石川 憲一
昨今の環境への問題意識の高まりと共に,安全で環境負荷が少なく,CO2を排出しない太陽電池による発電が注目を集めている。現在太陽電池はシリコン系,化合物系,有機色素系等に分類される。それらの中で,シリコン系と呼ばれるIC等のデバイスに用いられている半導体(シリコン)を用いた太陽電池は80%以上のシェアを有している。この太陽電池は結晶系太陽電池とも呼ばれ,単結晶或いは多結晶シリコンインゴットから切り出した薄いウェハーを利用している。シリコンは光が当たるとその内部で正孔と電子を発生する性質を持っている。この結晶系太陽電池はn型半導体とp型半導体を組み合わせることによって正孔と電子をそれぞれの電極に集めることによって発電できる仕組みとなっている。本原稿では結晶系太陽電池に用いられているシリコンウェハーを切り出す切断加工技術について解説する。・・・(続きは本誌で)
OPTRONICS WORLD 各社出展製品
発明・特許のこぼれ話 第28回 ピアノに見る発明
SMK(株) 鴫原 正義
今年は,ピアノの詩人フレデリック・ショパン(1810〜1849)の生誕200年ということで,それに因んだ音楽会が数多く開催されています。更に,昨年はピアノができて300年ともいわれました。今回はそのピアノの世界を覗いてみましょう。ピアノに代表される鍵盤楽器は17世紀頃のヨーロッパで使われ始めます。チェンバロはその時期の代表的な楽器で,形はピアノに似ていますが弦を引き掻いて出す音色はピアノと異なります。ピアノに関しては1709年にイタリアのチェンバロ製作者バルトロメオ・クリストフォリ(1655〜1731)が「アクション」構造の基本形を発明した時に始まるといわれます。このアクション構造はピアノの音を自由に制御する装置で,弦を叩くハンマーの動作やダンパーの動きとの組合せで弦の振動を制御するピアノの中枢的部分です。更にクリストフォリは2本の弦を並べて音を大きくし,ペダルによって叩く弦の本数を変えて強弱を付けるなどの工夫もしているのです。・・・(続きは本誌で)
USA Today 第27回 ブロードバンド勝ち組はケーブル!?
Optomarketing USA 中島 和宏
北米においては,電話通信業者,ワイヤレス通信業者を抑えて,一般向け通信ネットワーク・サービスのトップを維持しているのがケーブル通信サービス(MSO: Multiple System Operator)業者である。その彼等は現在,着々と「ワイドバンド」への移行を進めている。業界標準でいうDOCSIS 3.0だ。DOCSIS 3.0は,現行2.0における下り40Mbpsと上り30Mbpsをそれぞれ4本束ねて論理的には160Mbpsと120Mbpsとする。中には8本束ねて下り320Mbpsとする試みもあるが,現実的には,まだ100Mbps超の運用が可能と謳っているようだ。いずれにしても,従来のDOCSIS 1.x / 2.0混在チャネル方式から,ケーブル網のTCP/IP通信を一気に高速化/広帯域化するとして「ワイドバンド」と呼ばれている。・・・(続きは本誌で)
原点に戻って学ぶレーザー原論 第13回 各種レーザー(1)ガスレーザー
(独)科学技術振興機構 黒澤 宏
今回から各種レーザーについて具体的にお話しする予定だが,その前にレーザー媒質を大まかに見てみよう。反転分布を持ち,光を増幅させるレーザー媒質を大きく次の4つに分けることができる。気体(ガス),固体,半導体そしてその他である。レーザー媒質候補としては,反転分布を維持できること,ポンピングエネルギーを取り入れる方法とレーザーエネルギーを取り出す方法が存在すること,反転分布が存在するときその媒質はレーザー波長に対して透明であることが必要である。媒質は,必ずしも安定である必要はないが,誘導放出を作るのに十分な時間の間は存在し続けなければならない。たとえば,エキシマレーザーの媒質であるエキシマ(分子)は,励起状態でしか存在せず,寿命も短いが,この分子の存在が反転分布そのものであり,この条件を満たしている。・・・(続きは本誌で)
光技術者のための基礎数学 第16回 フーリエ変換( II )
職業能力開発総合大学校 河合 滋
この節では,フーリエ変換の主な性質について述べる。u(t),v(t)のフーリエ変換をそれぞれU(w),V(w)とおくことにする。
(1)線形性
u(t)+v(t)のフーリエ変換はU(w)+V(w)となる。
光技術の研究開発・特許動向II/技術別に見る最新情報 第148回 太陽電池パネル
嶋本国際特許事務所 嶋本 久寿弥太
太陽電池パネルは,太陽光発電に用いる太陽電池の基本単位で,太陽電池モジュールと同義語として知られており,太陽電池パネルの称呼検索(2010年2月現在)による特許出願公開件数は,484件に達している。太陽電池パネルの研究開発成果を見ると,2008年(平成20年)から2010年2月15日(平成22年)にかけての特許出願公開を企業別に見ると,1998年1件,1999年1件,2006年16件,2007年11件,2008年14件,2009年(10月1日まで)12件となっていて,合計55件となっている。最近公開されている55件の企業のランキングを見ると,日立ハイテクノロジーズが7件で1位となっており,2位は日東電工で5件,3位はシャープ,三菱電機,三菱重工がそれぞれ4件,6位は三菱化学,シライテックがそれぞれ3件で,7社となっている。7社以下の企業・大学などは,琉球大学,学校法人大同学園,パナソニック電工,アイカ工業,京セラ,富士電機ホールディングス,シチズン時計,日清紡ホールディングス,ミサワホームなど2大学・19社が顔を出している。・・・(続きは本誌で)
光産業国内生産額,2008年度実績16.7%減,2009年度見込み9.5%減,2010年度予測は4.4%増
光産業技術振興協会では,1980年度以来調査を続けている光産業国内生産額統計について,2008年度(2008年4月〜2009年3月)の実績と2009年度の見込み,および2010年度の予測を発表した。それによると,2008年度の実績は光伝送機器・装置,記録型光ディスク,LEDがそれぞれ増加したものの,8兆3,426億円となり,マイナス1.3%だった昨年の予測を大幅に下回るマイナス16.7%の成長率だった。2009年度見込みは景気後退による消費低迷や企業の設備投資抑制の影響を受け,同マイナス9.5%の7兆5,524億円と2008年度実績をさらに下回る見通しだ。一方,2010年度の予測については,同4.4%の7兆8,828億円とプラス成長に転じるとしている。なお,本年度からカメラ付携帯電話と太陽光発電システムの生産額が新たに調査対象項目に加わった。・・・(続きは本誌で)
注目のLED電球市場,「エコな明かり」を巡る陣取り合戦が始まる!
オフィスへ,店舗・商業施設へ,家庭へとLED照明器具の本格的な普及が始まろうとしている。オフィスや店舗・商業施設向けではこの4月に施行する改正省エネ法への対応から,関連する事業者などでその導入機運が高まっている。例えば,IDECやロームでは自社オフィス内の照明を全てLEDに代えているほか,大手コンビニエンスストアのローソンも新規店舗からLED照明を順次設置していく意向を示している。また,出光興産やコスモ石油では運営するガソリンスタンドの照明をLED化するなど,その動きは活発だ。このうち,コスモ石油が現時点で,LED照明を導入しているのは2店舗だが,採用した各種LED照明はシャープが開発したものだという。・・・(続きは本誌で)
3Dデイスプレイ普及のカギ
電機メーカ大手各社が家庭向け3Dディスプレイの開発を公表する中,ついにパナソニックが4月に3DディスプレイとBlu-rayレコーダ/プレーヤを市場投入することを明らかにした。これに続きソニーも,6月にディスプレイ,夏から秋にかけてBlu-rayレコーダ/プレーヤを発売すると発表し,いよいよ3D時代の幕が開けようとしている。他のメーカも,シャープや東芝が試作機を公開しており,十分に製品レベルの技術を持っているようだ。また,三菱電機も米国でリアプロ方式の3Dディスプレイを販売しており,国内での発売も技術的な問題は無いだろう。しかし,各社とも国内での具体的な製品発売時期については明言を避けており,先行する2社の推移を見つつ,参入時期のタイミングを探っているように見える。・・・(続きは本誌で)
NEWS FLASH
DATA ROOM
▼レーザー加工機輸入数量,13ヶ月ぶりのプラス
▼発光ダイオードの生産実績,6ヶ月連続のプラス
▼民生用電子機器国内出荷金額,対前年同月比127.6%の2,124億円"
CALENDAR
EVENTS
▼第22回量子情報技術研究会(QIT22)
▼第4回新画像システム・情報フォトニクス研究討論会
▼2010年 第35回光学シンポジウム 「光学システム・光学素子の設計,製作,評価を中心として」
▼ISLC 2010(22nd IEEE International Semiconductor Laser Conference)
PRODUCTS INFORMATION
超精密加工・計測技術は各種ディスプレイ,メモリー,デジタルカメラなど,様々なデジタルAV機器等における光デバイス製造に使用されています。
技術的な進展状況を見てみると,現在では超精密切削技術や研削技術,計測技術等の進歩によって,すでに10nmレベルの形状精度と1nmレベルの表面粗さ機械加工も可能になっているということです。
今月号の特集は,電子・光デバイスの超精密・マイクロ加工技術と計測技術に焦点をあて,研究開発の最新動向を紹介していただきました。
企画をしていただいたのは中部大学・工学部の鈴木浩文教授です。お忙しい中を有り難うございました。
超精密加工・計測技術は,製品のさらなる低価格化や高機能化等,競争力確保に必要不可欠なキーテクノロジーです。
この技術進展が世界における日本製品の今後のプレゼンスの成否を握っているとも言って良いでしょう。
先月号の特集で取り上げた3Dテレビ,やはりというか,サムスン電子が日本製よりも安い3D対応テレビ投入を米国で発表しました。
パナソニックのプラズマ方式は米家電量販店Best Buyで50型が2,500ドル。
これに対し,サムスン電子は,最低価格のLEDを使わない液晶方式46型が1,700ドル(ちなみに韓国内では3,000ドル),プラズマ方式は50型1,800ドルからで,LED液晶テレビは40型2,000ドルからの品揃えになっている。
景気の良くない状況では,一般消費者はどうしても安いほうに行きがちです。
例え画質や機能が上だとしても,細かい事を気にしない国の消費者には通用しません(中国の富裕層は高くても敢えてMade in Japanを求めますが)。
日本メーカは3Dテレビを,韓国や台湾メーカに奪われた市場を取り戻す絶好のチャンスと捉えていました。
サムスン電子は従来どおり価格競争に持ち込む戦術のようです。
3月4日付けの日経産業新聞に興味深い記事が載っていました。
紹介します。
日本鋼管を経て1994年から約10年間,サムスン電子の常務を務め,李健熙前会長の右腕として活躍した吉川良三・東京大学ものづくり経営研究センター特任研究員がサムスンの強さの理由を語っています。
以下,記事から抜粋・引用します。
サムスンは「日本が開発した製品を技術や機能の観点で分解して,次にそれらを組み立てていく。
新興国には機能を削ぎ落とし価格を抑えるなど,製品ごとに松竹梅をそろえ適正価格で売る」,「韓国は日本のようにイノベーションは起こさないし,そのための基礎研究に興味がない。基礎研究は日本に任せて,デザインやマーケティングなど,販売に直結する領域に注力する。
日本が隣国である地の利を活かし,知財に無頓着な日本から優秀な人材を引き抜くことができた」等々。
吉川氏は,日本企業に次のように忠告しています。
「きりのない過剰品質は顧客にそっぽを向かれる」,「日本には危機感はあるが危機意識がない。喉もと過ぎれば熱さを忘れる。平時こそ危機意識を持ち次の一手を考えないといけない」,「今度は韓国から学ぶべきだ」と。
編集長 川尻 多加志
「ナノフォトニクスとプラズモニクス(仮)」(敬称略)
▼大阪大学フォトニクス先端融合研究センターが目指すもの:大阪大学 岩崎 裕
▼プラズモニクスとナノイメージング:大阪大学 河田 聡
▼プラズモニクスとナノ光集積回路:大阪大学 高原淳一
▼プラズモンチップを用いたバイオセンサ:大阪大学 民谷栄一
▼有機太陽電池とプラズモニクス:大阪大学 尾崎雅則
▼プラズモニクスを応用した次世代磁気記録:大阪大学 中谷亮一
▼プラズモニクスで映し出す細胞内の生体分子:大阪大学 藤田克昌
▼プラズマフォトニクスとその産業応用:大阪大学 北野勝久
(都合により,内容に変更のある場合があります。)