月刊OPTRONICS
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2009.6 vol.28 No.330 |
総論─高効率太陽電池への期待─
豊田工業大学 山口 真史
2008年7月に北海道・洞爺湖で開催されたG8サミットでも議論されたように,地球温暖化は確実に進行しかつ深刻になりつつある。こうした中,太陽電池を用いた太陽光発電システムは,深刻化する地球環境問題やエネルギー問題を解決する手段として,世界中から大きな期待が寄せられている。ドイツの気候変動諮問会議がまとめた「2100年の世界エネルギービジョン」によれば,2100年には,世界のエネルギーの7割が太陽(光)発電で賄われるだろうと予想されている。・・・(続きは本誌で)
集光用多接合型太陽電池
シャープ(株) 高本 達也
集光モジュール技術
大同特殊鋼(株) 荒木 建次
多接合太陽電池の応用先として,近年急速に注目されているのが地上用集光発電システムである。本章では集光モジュールにつき解説を行う。集光モジュールは図1に示した発電システムの内,○で囲った部分ひとつひとつである。ちょうど,従来型太陽光発電システムでのソーラーパネル1枚1枚に該当する。本題の集光モジュールを論じる前に上記30kWシステムについて簡単に紹介する。本システムはNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「太陽光発電新技術等フィールドテスト事業」の補助を受け建設された。・・・(続きは本誌で)
フィールドテストによる集光式太陽光発電システムの評価
豊橋創造大学 見目 喜重
太陽光発電コストの低減を目的に,フレネルレンズを用いた集光式太陽光発電(PV)システムの研究開発が欧米を中心に積極的に進められている。集光式PVシステムは発電に直達日射のみを利用するため,湿度が高く散乱日射の割合の多い日本では,その導入は不向きであると言われてきた。そうした中で,日本においても2つのプロジェクトの下で集光式PV システムの研究開発が進められ,愛知県豊橋市にいてフィールドテストが実施されている。本稿では,それらのフィールドテストの結果を基に,集光式PV システムの発電性能(変換効率,年間発電量)やその課題について述べる。・・・(続きは本誌で)
新型太陽電池材料
豊田工業大学 山口 真史
太陽電池として,結晶シリコン系,薄膜シリコン系,CIGSやCdTeの化合物多結晶薄膜系,?-V族化合物多接合型および集光型,色素増感系,有機系など多くの材料系で研究開発が進められ,その多くが実用化されている。これらのアプローチとは別に,近年,UNSWのM. Greenが命名した第三世代太陽電池がある。第一世代は,結晶シリコン太陽電池,第二世代は,薄膜シリコン,CIGSやCdTeの薄膜太陽電池を指している。単一接合セルでは変換効率31%,その集光動作では41 %が限界であり,第1世代,第2世代の太陽電池技術は,そこで尽きるという。・・・(続きは本誌で)
神が人類に与えた最高の贈り物が太陽です
太陽光発電技術研究組合理事長 桑野 幸徳氏
IT市場ウォッチング 第98回 太陽電池と液晶,半導体の違い
(株)野村総合研究所 藤浪 啓
在庫調整が進み景況感の改善が徐々に見られつつある電子デバイス業界であるが,伸びきったサプライチェーンは改善が進みつつあるものの,消費者のマインドは引き続き落ち込んでおり最終需要は改善の兆しが見られない。キマンダやインフィニオンの破綻,台湾メモリー連合の創出,ルネサスとNECエレクトロニクスの統合など半導体,液晶関連ではいつ戻るとも知れない市場環境を受けて合従連衡が進みつつある。そのような中,太陽電池市場に対する注目が高まっている。・・・(続きは本誌で)
発明・特許のこぼれ話 第18回 ジェネリック医薬品
SMK(株) 鴫原 正義
ジェネリック医薬品とは,先行して開発した医薬品の特許期限が消滅した後に,同じ内容で他の薬品会社が製造販売する医療用の医薬品をいいます。特許権が活きている間は,権利の保有会社が商品名を付けて製品化していますが,欧米では権利の消滅後は商品名に対し一般的な薬品名称で呼ばれるので“Generic”といわれています。欧米では古くから活用されているのですが,日本では最近になって後発医薬品ともいわれ,少しずつ浸透してきました。政府は2007年6月に後発医薬品の普及促進に関する数値目標を掲げた内容を閣議決定しています。それを受けて,厚生労働省が同年10月に「後発医薬品の安心使用促進アクションプログラム」を策定し具体的な行動に移っています・・・(続きは本誌で)
USA Today 第18回 宇宙に挑む学生達
Optomarketing USA 中島 和宏
日本がゴールデンウィークに入る頃,カリフォルニア州サンルイス・オビスポ市にある州立科学技術大学で,規模は小さいながら内容は壮大な超小型衛星開発ワークショップが開催された。「CubeSat」と呼ばれる衛星開発プロジェクトには,世界中の大学や研究機関が参加しており,当会議でも60件以上が報告された。「CubeSat」は基本的な仕様として,そのサイズが一辺10cmの立方体で,重量1kg,あるいはミッションに応じてそれらを拡大したバージョンが開発され,アマチュア無線帯による通信と運用が成されている。運良く,いや計算通りに周回軌道に辿り着いた後には様々な工夫で「開封」されて,太陽電池パネルや,アンテナ,カメラ,センサ等,またレンズ光学系といった機器,機能をその超小型の箱から繰り出す。まさに詰め込みアイデアと技術が満載のアマチュア衛星開発プロジェクトである。・・・(続きは本誌で)
21世紀を切り開く機能性単結晶の基礎と応用 最終回 フォトニック結晶による光の発生・制御技術の最近の進展
京都大学 野田 進
光の研究コミュニティ-技術進展を支える光関連研究会/グループ- 第70回 (社)照明学会 光関連材料・デバイス研究専門部会
埼玉大学 鎌田 憲彦
(社)照明学会の光関連材料・デバイス研究専門部会は、ディスプレイを含めて広く照明に関わる光関連材料やデバイスについて調査し、研究を推進することを目的としています。具体的には、紫外、可視、赤外領域の発光・伝達・変換に関する材料・デバイス(情報通信関連を除く)の調査及び研究の促進、単独主催及び他学会・他研究専門部会との共催・協賛による公開研究会の企画、開催等を主体に、毎年委員会を4回、公開研究会等の活動を4回開催しています。メンバーは関連分野の企業、研究機関や大学の専門家から成り、委員長1名と幹事若干名を含む15名以内の委員で構成されています。1986年(昭和61年)の設立以来、伊吹順章先生、一ノ瀬昇先生、中西洋一郎先生(静岡大学電子工学研究所)を歴代委員長として、この間の技術開発を推進、支援してきました。この間の経緯については、創立20周年記念講演会予稿集(表1)に中西先生がまとめられています。執筆者は中西先生の後任として、平成19年度から委員長を務めています。
光に関わる材料やデバイスの分野では、周知のように新たな技術の発展と競合が目覚ましく目が離せません。地球環境保全のために、白熱電球から蛍光灯への流れが、これまで前者の比率が高かった国々でも進んでいます。わが国で初めて達成されたGaN系半導体の高品質な結晶成長技術を基盤として、緑色、青色〜紫外領域のLED技術は長足の進歩を遂げました。
原点に戻って学ぶレーザー原論 第3回 波としての光入門(その2)─フーリエ変換─
(独)科学技術振興機構 黒澤 宏
前回につづいて波の合成に関する話題である。周期を持つ波は必ずいくつかの波から合成されている。今回は,波の合成よりもむしろ波の分解について,フーリエ級数展開そしてフーリエ変換という数学を道具に使って勉強する。フーリエ変換は非常に便利な道具である。最後に,これを使って周期性のない単パルスの周波数スペクトルを求める。・・・(続きは本誌で)
光学技術者のための電磁場解析入門 第6回 FDTD法による光電磁場解析の基礎と応用
(独)情報通信研究機構 高山 佳久
現在,電磁場の伝搬解析は重要な技術として注目され,これまでに多くの計算手法が検討されている。この中で,Finite Difference Time Domain(FDTD)法は,差分化したマクスウェルの方程式を時間領域で数値的に解くものであり,電磁場の伝搬を詳細に解析する手法の一つとして広く知られている。FDTD 法は,Yee が提案したアルゴリズムに基づいて電磁場の伝搬を計算する。しかし実際には,伝搬の計算機能に幾つかの要素技術を組み合わせる必要がある。本稿では,電磁場の伝搬を計算する基本的なアルゴリズムに加えて,計算領域への電磁場の導入および計算領
域周囲への吸収層の配置について述べる。・・・(続きは本誌で)
技術士PLAZA 第18回 携帯電話技術発展の歴史と今後の課題
森島技術士事務所 森島 光紀
今日の「ケータイ」の基礎を作り出した約100 年の歴史,技術の発展過程,サービス事業者の変遷,技術発達と社会・文化・経済・行政・海外の関わり,国際標準化活動,技術の系統化,日本のオリジナル技術,課題と考察等の調査を国立博物館でした。その概要および世界市場で日本が生き残る対応と今後の課題について述べる。
歴史を学ぶことと同時に,失われつつある産業の遺産を保護することが大切である。日本が強みとするアナログ技術(人と端末機器のインターフェースは全てアナログである)を活かし,「デジタル技術にアナログ技術を融合」したシステム・端末開発を目指すことで,オンリーワンを築くことが出来るかである。そういった技術開発を産学官連携で行っていく必要がある。将来の通信はユビキタス通信であり,災害・防災,過疎地,少子高齢化,環境保全を支援するような通信で世界の平和に貢献するようでなければならないと考える。最後に,世界市場への再挑戦を行っていくことに期待したい。
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ケータイで駅の改札を通り,コンビニでお金を支払い,ケータイで書かれた小説を読む等を,若者が普通に行っている国は日本だけだ。これほど先行している日本のメーカがなぜ世界で数%のシェアしか取れないのだろうか?携帯電話機メーカーの競争力は,大きく分けて3 つの要素で構成される。「メーカーの技術力」,それに加えて「標準化活動+政治力」そして「マネージメント力・営業力+ブランド・マーケティング力」である。
光技術者のための基礎数学 第6回 微分法I
職業能力開発総合大学校 河合 滋
関数y=f (x) がx=x0に近いすべてのx に対して定義されていて,x が限りなくx0 に近づく時(x → x0 と書く)に,f (x) がある値α に限りなく近づく場合,α をf (x) のx0 における極限値と呼び,次式のように表現する。・・・(続きは本誌で)
光技術の研究開発・特許動向II/技術別に見る最新情報 第138回 放射線吸収ガラス
嶋本国際特許事務所 嶋本 久寿弥太
従来,熱線吸収能に優れた建築用や車両用に好適な放射線吸収ガラスとしては,酸化鉄を含有した青色ガラスなどが知られており,また熱線と紫外線を同時に吸収する建築用,車両用ガラスとして酸化チタンの紫外線吸収能を利用した,酸化鉄,酸化錫,酸化チタンをを含むガラスが提案されてきた。更に,近赤外線吸収材料として,銅を含有する燐酸化合物を10重量%以上含有する近赤外線吸収材料が知られている。・・・(続きは本誌で)
ついに電力買い取り制度導入へ!太陽光発電普及の施策とは
「太陽光発電の規模を,2020年までに今より20倍にします」麻生太郎内閣総理大臣は4月9日に行なった日本記者クラブの講演の中で,太陽光発電を低炭素社会実現のための最重要ポイントと位置づけた「太陽光世界一プラン」を発表した。その内容は,昨年6月に福田康夫前内閣総理大臣が発表した「福田ビジョン」にあった,2020年までに太陽光発電導入量を10倍にするという目標を,さらに倍にするという大胆なものだ。・・・(続きは本誌で)
進むFPDのグリーン化!
景況悪化がディスプレイ業界に大きな影響を与えている。市場の伸びは急速に鈍化し,ディスプレイメーカは在庫・生産調整を余儀なくされている。しかし,ここにきて生産回復の動きが一部で見え始めてきた。シャープは年初より稼働率を抑えていた亀山第2工場の液晶ディスプレイ(LCD)の生産を,フル稼働に戻したことを明らかにした。また,同社は大阪府堺市に現在建設中の新工場の稼動開始時期を,当初の2010年3月からこの10月に前倒しすると発表した。一方,パナソニックも在庫調整が一段落したことを受け,LCDの生産をフル稼働に戻すとの報道もある。・・・(続きは本誌で)
レーザーEXPO2009,レンズ設計・製造展2009,光ファイバ応用技術展2009開催 不況下でも過去最高の動員数を記録!
レーザーEXPO2009(主催:レーザー学会),レンズ設計・製造展2009,光ファイバ応用技術展2009(主催:月刊オプトロニクス)が,パシフィコ横浜で4 月22 日〜 24 日の会期で行なわれた。厳しい経済情勢にも関わらず,今年は220 社(団体)が出展したほか,3 日間の総入場者数は昨年を上回る過去最高の8,991 名となり,光業界のポテンシャルの高さを伺わせるものとなった。また,会場内では今年より設けられたレーザー学会産業賞(主催:レーザー学会)の表彰がとり行なわれた。・・・(続きは本誌で)
HEADLINE NEWS
DATA ROOM
▼液晶テレビ輸入数量,4ヶ月連続のプラス
▼太陽電池パネルの生産実績,マイナスに転落
▼民生用電子機器国内出荷金額,対前年同月比85.2%の2,418億円
PHOTONICS SPECTRA
▼科学分野に12億ドル投入へ
CALENDAR
EVENTS
▼AM-FPD’09
▼レーザー学会 第20回若手技術者のためのレーザー応用セミナー「安心・安全な社会を実現するレーザー応用技術」
▼基礎から学ぶ光学設計セミナー−夏期コース−
▼光設計研究グループ 第42回研究会「光学設計と画像処理の融合」
▼第131回結晶工学分科会研究会「結晶欠陥の評価でみえる窒化物半導体の進展」
▼第113回微小光学研究会「微細空間の微小光学」−微細・微小構造による光伝送技術−
▼第20回マイクロマシン/MEMS展
▼ODF’10,Yokohama
PRODUCTS INFORMATION
今月号の特集は多接合太陽電池と集光発電システムです。
太陽電池には,現在主流となっている単結晶シリコンや多結晶シリコンを用いたバルク結晶型の他,アモルファス・シリコンや微結晶シリコン薄膜型,CIGSなどの化合物多結晶薄膜型,有機材料を用いた色素増感型や有機薄膜型など,様々なタイプがあって内外で活発に研究開発が進められています。
今回取り上げるのは,太陽光のスペクトルを有効活用するために太陽電池層を積層した?-?族化合物半導体多接合太陽電池で,光電変換効率は50%以上を期待できると言われています。
さらに,この太陽電池にフレネルレンズで太陽光を集光する発電システムは,将来の大規模発電システムとして大きな期待を集めています。
政府は,太陽光発電システム導入量を2020年までに現状の20倍,2030年までに40倍とする目標を掲げ,今年から太陽光発電システム設置に対する補助金制度を再開しましたし,新たな買い取り制度も検討しています。地方自治体も独自の助成に乗り出しています。
このようにますます活発化する太陽電池業界ですが,今月号では特集の他にも,フォーカルポイントで我が国の太陽光発電普及のための施策を解説するとともに,太陽光発電技術研究組合の桑野幸徳理事長にインタビュー,IT市場ウォッチングでは野村総研の藤浪啓氏に太陽電池事業の収益化について考察していただきました。
中国政府が世界的に例のないIT製品の中核技術情報を強制開示させる新制度を5月1日から実施すると発表しました。
実際の適用は来年の5月1日からで,知的財産侵害と日米欧が強く反発したことに配慮してか,規制を政府調達に限定するとしたものの,対象品目はこれまで通り13品目のまま変わらず。麻生首相は日中首脳会談で,政府調達でも中国の場合は範囲が広いのではないかと撤回を求めました。
中国側はソフトウェアの欠陥を狙ったコンピュータウイルスの侵入防止のためと言っていますが,ソースコードの強制開示でノウハウを取得して,研究開発力で優位に立つ外国企業の競争力を削ぎ落とし,国内企業を育成するとともに,国内市場の購買力を武器に独自の考え方や方式などを押しつけるのではないかと懸念の声が上がっています。
中国は決して覇権主義を追求しないと表明していたはずですし,中国の発展は世界の不安定要因ではなかったはずですが・・・・・・。
9月に開催が予定されていたインターオプト'09が中止になりました。昨年来の急激な経済環境の悪化から出展企業数と出展規模が激減したことが理由とのことです。
第1回が開催されたのが1979年ですから,実に30年も続いてきた我が国を代表する光エレクトロニクス技術の専門展示会であっただけに,今回の結果は大変残念です。
ただし来年以降,諸般の事情が好転して状況が整えば再開を検討するとのことなので,リニューアル・カムバックを期待したいと思います。
編集長 川尻 多加志
「異種材料光集積技術の現状と展望」
総論:東京大学 日暮 栄治
エピフィルムボンディングによる異種材料の高密度集積:(株)沖デジタルイメージング 荻原 光彦
ダイレクトボンディングを用いた磁気光学光アイソレータの集積化:東京工業大学 水本 哲弥
ウェハボンディングによるGe/Siヘテロ接合の作製とフォトダイオードへの応用:高知工科大学 神戸 宏
Si-MEMSミラーを用いたInP系波長可変面発光レーザー:横河電機(株) 渡辺 哲也
シリコン・ガラス基板を積層した超小型薄型光センサ:東京大学 日暮 栄治
スーパーヘテロインテグレーション技術によるLSIチップ上への面発光レーザーの搭載:東北大学 小柳 光正
(都合により,内容に変更のある場合があります。)