
月刊OPTRONICS
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2009.8 vol.28 No.332 |
ラマン分光法総論:「変幻自在」な最先端分光法
学習院大学 岩田 耕一
ラマン散乱が1928 年にインドの物理学者C. V. Ramanによって報告されてから,80 年が経った。その意味では,ラマン分光法は決して新しい分光法ではない。しかし,ラマン分光法は,現在も進化を続けており,「最先端分光法」であり続けている。ラマン分光法に関する包括的な国際会議として隔年開催される国際ラマン分光学会議(International Conference on Raman Spectroscopy, ICORS)には,2008 年(ロンドン),2006 年(横浜)と約600 名もの参加者があった。なぜ,80 年の歴史をもつ分光法が最先端の手法であり続けるのか?・・・(続きは本誌で)
生細胞のラマン分光イメージングとin vivo活性診断
東京大学 奥野 将成,濱口 宏夫
近接場ラマン分光の基礎と応用
大阪大学 齊藤 結花
人間の目に見える光の波長は400-700nmで,古典的な光学顕微鏡はこの波長域で開発され発展してきた。しかし,光学顕微鏡の空間分解能は波の持つ性質によって制限されている。例えば開口数NAの対物レンズで集光した光の第1暗環の半径rを基準に考えると,光の波長λを用いて以下の式で書ける。・・・(続きは本誌で)
多焦点CARS顕微鏡によるリアルタイム分子イメージング
大阪大学 南川 丈夫,荒木 勉,橋本 守
コヒーレントラマン分光イメージング
東京大学1,(独)科学技術振興機構2 加納英明1,2,濱口 宏夫1
新しい界面選択的な偶数次非線形振動分光
(独)理化学研究所 山口 祥一,二本柳 聡史,田原 太平
界面研究の様々な実験手段の中で,偶数次非線形レーザー分光法は非常にユニークな位置を占めている。この方法の界面選択性は,電気双極子近似の下で偶数次の非線形感受率χ(2n)(nは正の整数)が等方的でキラルでないバルクにおいてゼロになるのに対して,界面においてはゼロでない値を取り得る,という原理に基づいている1)。偶数次非線形分光で観測にかかるのは,分子がある配向性を有する界面領域であって,例えば液体界面の場合はその厚みは単分子〜数分子層程度であると理論的・実験的に見積もられている。このため,界面を挟むバルク相が等方的であるという条件の下で,偶数次非線形分光は分子レベルの界面選択性という強力な利点を有する。・・・(続きは本誌で)
携帯型ラマンイメージング装置の開発と浮世絵とその版木への応用
埼玉大学 坂本 章,国立歴史民俗博物館 小瀬戸 恵美,(株)エス・ティ・ジャパン 落合 周吉,東山 尚光,増谷 浩二,木村 淳一,SAPIARC 田隅 三生
文化財の保存・修復を行う場合に,文化財を構成する顔料,支持体,膠着剤などの文化財構成物質を同定することは重要である。しかし,日本では分析のための試料採取が禁じられていることが多く,構成物質の同定には非接触,非破壊が要求される。これまで,文化財,特に本稿で述べる浮世絵の色材に対する非接触の分析法としては,蛍光X線分析法や可視−近赤外反射分光法,三次元蛍光分光法などが用いられているが,得られる情報は元素分析(同定)や電子状態間の反射吸収,蛍光(発光)スペクトルに関するものであり,直接的な分子構造情報に乏しい。我々は,より直接的に分子構造情報を得ることが可能なラマン分光法を用いて,非破壊,非接触で文化財構成物質の構造同定を目的とした携帯型ラマンイメージング装置を開発した。・・・(続きは本誌で)
SERS分光とバクテリア観察への応用
(独)産業技術総合研究所 伊藤 民武
発明・特許のこぼれ話 第20回 製氷と冷蔵庫
SMK(株) 鴫原 正義
暑い時期には冷たいものが爽やかさを呼びます。現代だからこそ自宅で氷を作り,冷たいものを飲んだり食べたりして自由に涼を味わうことが出来ますが,製氷・冷蔵技術の無かった時期の夏は大変な事だったでしょう。特段のハイテク技術とまではいかなくとも冷却や冷凍の技術によって生活環境が大きく変化したことは事実です。今回は涼を求めて製氷と冷蔵庫にスポットを当ててみました。製氷技術が生まれる前は,保存した自然氷を利用していました。紀元前に栄えたポンペイの遺跡や,紀元前の古代インドの遺跡から氷室の跡が確認されています。また,およそ2000 年前の中国でも,冬期に氷を貯えておき夏に蔵から取り出す「蔵氷」というものがあり,日本でも韓国を経由して奈良時代頃から氷室が使われ始めました。このような氷は洋の東西を問わず大変貴重なもので,保存や輸送などの工夫が生まれています。・・・(続きは本誌で)
USA Today 第20回 新たな話題の尽きない太陽電池分野
Optomarketing USA 中島 和宏
様々な産業が,経済危機の影響で落ち込んでいる中で,なおも活発と言える分野がある。そのひとつが,太陽電池関連であろう。IEEE 主催の太陽電池専門会議(PVSC)が,6月7日〜12日にかけてペンシルバニア州フィラデルフィアで開催された。今年はSEIA(ソーラー・エネルギー工業会)主催のPV America会議と併催で,参加者は40カ国以上から,約3,000名が集まり報告数は650件を超えた。会議名からもわかるように,元々小規模な催事ゆえに,記録的な盛況ぶりだと言う。同会議は1961年に始まり,途中抜けている年もあるため今年は第34回となっている。太陽電池の研究者による最新の技術と研究発表の場として歴史を刻んできた。技術分野は,今回9セッションで新規材料・技術,?-?関連,?-?および集光型,結晶シリコン,アモルファス/ナノ/薄膜シリコン,宇宙開発,モジュールおよびシステム部品,総合システムおよび発電施設,そして市場環境等であった。・・・(続きは本誌で)
原点に戻って学ぶレーザー原論 第5回 電磁気学から見た光の反射と屈折
(独)科学技術振興機構 黒澤 宏
電磁波は電場と磁場が時間的に変動しながら空間を伝わっていく波であることはすでに述べた。何もない自由空間を伝搬していくときは「波」として干渉現象が現れるが,物質が存在すると反射・屈折などの現象が現れる。前回,反射と屈折を波動現象の立場から考えた。今回は,光電場に注目し,電磁気学に則って反射と屈折の現象を詳しく見てみる。特に,空気からガラスを例にとって反射を見ると,電場の方向が入射角と共に変化することやある角度で入射させると特定の偏光成分は反射されない現象など,非常に面白いことが見えてくる。数式がたくさん出てくるが,簡単なものだけなので,できるだけフォローして欲しい。・・・(続きは本誌で)
光学技術者のための電磁場解析入門 第8回 光記録分野における電磁場解析
ソニー(株) 齊藤 公博
光ディスクは,対物レンズで回折限界に絞ったレーザー光によってマークを記録した後,その微小なマークからの回折光をもう一度対物レンズ上で集めてマークの有無に対応した情報を読み出す装置である。記録面上の光スポットサイズは,対物レンズの周辺光の入射角度(空気中)のsineをNAとして波長/NA に比例するので,入射角度が深い程光スポットを小さく,したがって記録容量を大きくできる。このような高いNAで光を集光する場合には,入射光すなわち電磁場の偏光の影響や,ディスク上のマークが微小である事による影響を考慮する必要が生ずる。図1に示すように,光ディスク解析における電磁場解析はこのような場合の再生信号を正確に求めることを目的としている。また,多層膜の形成された案内溝のような複雑な構造中にマークを記録する場合に,熱源分布としての電場強度分布を求める事も必要とされる。電磁場解析の手法は各種知られており,光ディスクに適用する場合には,これらの方法を選択し使用する事になる。ここでは,筆者の知る限りにおいて,FDTD法を含めた幾つかの電磁解析方法と特徴および応用例の紹介を試みたい。・・・(続きは本誌で)
光技術者のための基礎数学 第8回 微分法III
職業能力開発総合大学校 河合 滋
独立変数が2つ以上の関数の微分法を変微分法と呼び,丸い∂で微分記号を表す。z = f (x, y)という関数に関して,次の偏微分を定義できる。・・・(続きは本誌で)
技術士PLAZA 最終回 不思議な電磁調理器IHクッキングヒータとの出会い
(有)荒野技研 荒野 也
最近,家庭用のエネルギー源をすべて電気から得るオール電化住宅が累計で200 万所帯を超えたと報道された。この傾向は,高齢化社会と地球温暖化対策としての低炭素化社会への進行により,ますます加速されている。この家庭のオール電化の三種の神器は,給湯方式としてのヒートポンプ給湯器エコキュートと調理方式としての電磁調理器(IH クッキングヒータ)と冷暖房方式としてのヒートポンプエアコンであるが,さらに地球温暖化対策から電源自体を太陽光発電で賄うという状況になってきている。この中でヒートポンプ冷暖房空調は以前から進んでいたが,電磁調理器IH クッキングヒータとエコキュート給湯器は最近普及しはじめたものである。しかしこの中でIH クッキングヒータの基礎技術の開発には長い歴史がある。・・・(続きは本誌で)
光技術の研究開発・特許動向II/技術別に見る最新情報 第140回 吸収分光装置
嶋本国際特許事務所 嶋本 久寿弥太
吸収分光装置の国際特許分類は,G01J03 / 42で,1989年(平成元年)から2008年にかけての特許出願公開で見ると,1989年に30件,90年に15件,91年に13件,92年に22件,93年に25件,94年に28件,95年に20件,96年に15件,97年に36件,98年に43件,99年に29件,2000年に27件,01年に31件,02年に31件,03年に20件,04年に15件,05年に9件,06年に5件,07年に10件,08年に9件となっていて,合計422件となっている。吸収分光装置特許出願のランキングでみると,1位は島津製作所で57件,2位は横河電機株式会社で23件,3位は株式会社日立製作所で20件,4位は日本分光株式会社と株式会社ニコンがそれぞれ13件となっていて,5社合計で126件となり,全体422件の29.9%となっている。・・・(続きは本誌で)
新たな技術ロードマップ「PV2030+」に見る日本の太陽光発電の未来
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は,2004年に発表した太陽光発電の技術ロードマップ「PV2030」の見直しを行ない,新たに「PV2030+」として6月8日に発表した。今回の見直しは,発表から5年が経過した「PV2030」と実際の技術進捗との間に生じたズレを軌道修正するだけでなく,急激に変化した太陽電池を取り巻く環境に対応するという意味合いが大きい。例えば欧州や米国は独自の技術ロードマップを発表するなど,それぞれ中長期的な開発計画を打ち出してきている一方,国内では「低炭素づくり行動計画」や「CoolEarth −エネルギー革新技術計画」といったCO2削減を目的とした指針が導入され,太陽電池への期待が一層高まっている。さらに,海外を中心に太陽電池市場が急成長したことにより日本のポジションが相対的に低下している状況や,より長期的な開発計画の重要性が高まってきたことなどがあり,今回の見直しは予定よりも1 年前倒しで行なわれた。・・・(続きは本誌で)
太陽電池製造におけるレーザ加工の現状
世界的な成長産業として脚光を浴びる太陽電池。国内でも企業の新規参入や増産の動きが活発化している。生産量に関してみると,2008年の国別総生産量は対前年比85.9%アップの6,941MWとなった(表1)。材料別にみる2008年の太陽電池の生産量だが,現在市場の大半を占める結晶系(sc-Si : 2380.3MW / mc-Si : 3309.0MW)は合計5689.3MWに達し,さらに今後の市場成長が期待されている薄膜系では,その代表であるa-Siが121.7%増の328.1MWと拡大した(表2)。今年市場はドイツやスペインの助成政策の転換,さらには経済不況の影響もあってマイナス成長になるとの予測もあるが,依然として市場の前途は有望視されていると言えよう。他方,市場の拡大に伴い,その需要増加が期待されているのが,太陽電池関連製造装置だ。その中にはレーザを応用した装置も含まれる。レーザスクライブ(パターニング)装置もその一つ。特に薄膜系太陽電池の製造工程では各種パターニングプロセスにおいてこの装置が重要な役割を担う。太陽電池の製造現場で活躍するレーザ加工装置。今回はその市場と開発動向を追った。・・・(続きは本誌で)
新たな光回線市場開拓に向けた次の一手は?
総務省の発表によると,今年3月末のFTTH の契約数は1,501万件となり,初めて1,500万件を超えた。しかしFTTH需要は都市部を中心に需要が一巡した感があり,以前と比べて伸び率が落ち込んできている(図1)。2008 年からNGNのサービスを開始したNTTは,2010年までに2,000万件のFTTH加入数を目指してきたが,この不況の影響もあって契約数が伸び悩んでおり,今年5月の決算発表において数値目標を撤廃することを表明した。KDDIは,FTTH契約数が2008年3月期の71万件から2009年3月期には110万件へと増加しているが,やはり経済状況の悪化から2007年に発表した中期計画「チャレンジ2010」の売り上げ目標を断念しており,同計画で2010年度に200万件としたFTTH契約目標が達成できるかどうかは微妙な状況だ。こうした状況に対し,通信事業社各社は新たなサービスやコンテンツを提供することで市場のテコ入れを図っている。果たして新たな需要を創造する有効打は登場するのであろうか。・・・(続きは本誌で)
HEADLINE NEWS
DATA ROOM
▼液晶テレビ輸入数量,6ヶ月連続のプラス
▼光コネクタの生産実績,2ヶ月連続のプラス
▼民生用電子機器国内出荷金額,対前年同月比90.2%の1,944億円"
▼総務省,FTTHの契約数を発表
PHOTONICS SPECTRA
▼科学分野に12億ドル投入へ
CALENDAR
EVENTS
▼The Eighth Japan-Finland Joint Symposium on Optics in Engineering(OIE '09)
▼月刊OPTRONICS特別セミナー 光学・レーザーの原理まるわかり1dayセミナー
▼OPTRONICS WORLD 2009 Autumn
▼募集:第44回光波センシング技術研究会講演会「広域センシングを支える光技術」
PRODUCTS INFORMATION
今月号の特集は,ラマン分光法の最新動向にスポットライトをあてました。
企画していただいたのは学習院大学の岩田耕一教授。
特集ではこの分野の第一線で活躍中の方々に,いま注目すべき最先端の研究を紹介していただきました。
岩田教授が総論で述べられているように,80年という長い歴史を持つラマン分光法は気体,液体,固体と,測定対象を選ばず,非常に幅広い試料の測定が可能です。
この使い勝手の良さは,使用される光が紫外,可視,近赤外領域であって,この波長領域では空気や水がほぼ透明であるということに起因しているということです。
さらに,ラマン分光法は光源や分光器,検出器など,測定者がそれぞれの要求に合った最適なものを選んで独自のラマン分光計を組み立てることができるなど,創意工夫によって測定結果を大幅に向上させることができるという特長を持っています。
ラマン分光法は,ハードウエアを始めとした技術的進歩を幾つも取り入れ,今も進化を続けています。
また,我が国の研究水準は世界的に見ても高く,幅広い人材が活躍中です。
本文野のより一層の発展を期待しています。
ここ数年,新興国を含めた太陽電池メーカが急増しています。
根本的な背景にはフィード・イン・タリフ制度を始めとした各国の普及施策による市場の急拡大があるのですが,一方で製造ノウハウが余りなくても製造装置を買えば後はお任せで,ある程度の品質のものを作れてしまう,太陽電池もいわゆるターンキー製品になりつつあるという状況があるようです。
太陽電池の光電変換効率向上のための研究・開発では,内外の企業,大学,研究機関が熾烈な競争を繰り広げています。
その一方で,かつて新興国にキャッチアップされた幾つかの先端技術製品と同じように,太陽電池においても例えば変換効率が少しくらい悪くても気にせず「安かろう,まぁ良かろう」の製品で十分という流れになってしまうのでしょうか。
去る6月22,23日の両日,日本科学未来館において第5回・産業技術総合研究所・太陽光発電研究センター・成果報告会が開かれましたが,発表の中で2004年からスタートした各種太陽電池を用いた発電システムを設置したメガ・ソーラタウンのその後の不具合実例報告がありました。
それによると,モジュールの裏面に焦げ付きなどができ,サブモジュールが発電しなくなった不具合が幾つか見つかっているということです。
メーカ点検によるモジュールやパワーコンディショナの交換率もパワーコンディショナで9%,モジュールの枚数で2%なのですが,これをシステムとして見た場合,32%にもなるということです。
メガ・ソーラタウンで実験中の太陽電池発電システムはそれなりの品質のものと思われますが,これが「安かろう,まぁ良かろう」製品で,一般家庭に導入された場合,将来おこり得るトラブルが心配になります。
ぜひとも,国際標準に則った信頼性試験法の早急な確立と導入,さらには製品への表示を望みたいところです。
編集長 川尻 多加志
「注目の非極性面・半極性面発光デバイス」
総論
京都大学 川上 養一
非極性・半極性面上窒化物半導体発光デバイスの偏光特性の理論解析
金沢工業大学 山口 敦史
窒化ガリウム系半導体の無極性面及び半極性面を利用した光デバイスの研究
カリフォルニア大学 中村 修二,他
注目の非極性面・半極性面窒化物半導体発光デバイス
名城大学 天野 浩,赤h 勇,他
半極性面上InGaN系発光素子と緑色LDの可能性
京都大学 川上 養一
(都合により,内容に変更のある場合があります。)